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作者インタビュー|作品紹介|山越自費出版サービス

作者写真:出ア 哲弥
作者プロフィール:出ア 哲弥 でさき てつや
昭和39年12月19日 石川県生まれ
金沢大学教育学部卒業後、中学校教諭として勤務。担当教科は美術。
平成23年、東日本大震災をきっかけに執筆した『「露宿」から八十八年』(本書収録)で,北國新聞「第2回赤羽萬次郎賞」受賞。これ以降に書きためた泉鏡花と関東大震災にまつわるエッセイを、一冊にまとめて出版した。

泉鏡花の罹災記『露宿』との出会い

東日本大震災後、過去の作品を震災後の設定に書き直している作家がいることを知りました。日本の文学にとって3.11が、避けては通れない転換点になっているのではと感じました。では関東大震災後はどうだったのでしょう。気になり、調べてみることを思い立ちました。そこで出会ったのが、泉鏡花の罹災記『露宿』です。

泉鏡花が「3.11後の生き方」を考えさせてくれる

調べていくうちに泉鏡花の作品およびその人が、震災後変化していると感じました。その変化を取り上げて短い文章をいくつか書いてみよう、そう考えて書き始めた原稿が1年後、気づくとかなりたまっていました。本にすることを本格的に考えたのはその頃です。「利生記」とは神仏の利益(りやく)を取り上げた物語のことです。関東大震災後の泉鏡花が、私たちに「3.11後」をどう生きるか考えさせてくれるとして、『鏡花利生記(きょうかりしょうき)』と題しました。

人とのつながりで手作りの本に

装丁は私自身が担当し、挿画は中学時代の恩師である志田哲夫先生に依頼しました。無理なお願いだったにもかかわらず、志田先生には「お前のおかげで珍しい体験ができた」と言っていただきました。印刷・製本は、以前仕事を通じてお世話になった「山越」の間加田佳孝さんにお願いしました。間加田さんにはプロとして、全くの素人である私の思いを尊重しながら適切にサポートしていただきました。月並みですが、「絆」を感じる本作りとなりました。

装丁余話

表紙デザインのイメージは、本書の中でも引用している、関東大震災後の焼原に生命がよみがえる様子です。また表紙等に入れてあるロゴは、本書で重要な役割を果たしているQuotational Phrase(=引用句)の頭文字QとPを組み合わせて、QP→「卯」の文字に見立てたものです。なぜ卯?――泉鏡花は、幼い頃に母から聞いた「自分の生まれ年の干支から数えて7番目の動物(向干支)にまつわる物を身近に置いておくと厄除けになる」という教えを守り、ウサギがデザインされた品物をたくさん集めていたそうです。
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